大人の夏休み
小学校の介助員になってから、夏休みにいろんな仕事をしてきた。テーマパークのレストランとリゾート施設のおしゃれなカフェには何年か勤めた。いま考えてもよく頑張ったな〜と思うくらい過酷だった💦 大人になってせっかくもらえる夏休み。なんでわざわざいつもよりしんどい思いをして働かなくてはならないのか、疲れてくるとネガティブなことが頭をよぎる。来月収入がないと困るのだから仕事があってよかった、ここでの楽しみをみつけよう、と気持ちを上げるのに必死だった覚えがある。
最近はありがたいことに、自分で探さなくても向こうから来てもらえませんか?と声がかかるようになった。私でいいんですか?と素直に嬉しいが、期待に応えられなかったらどうしようと不安も抱えつつ、今年は児童クラブで働かせていただくことになった。
氷の壁
児童クラブには市内の2つの学校から44人の子供たちが来ていた。2年前までお世話になっていた学校の子が多く、半分は知っている子だ。下駄箱でY君の名前を見つけたときは嬉しかった。小1の頃はおじいちゃんと2人きりで夏休みを過ごしていたし、放課後も友達と帰ることはなく、ひたすらおじいちゃんを待つ毎日だった。支援学級の女の子と遊んでくれる優しい子だが、ストレスからへそを曲げ、反抗的な態度をとりがちでよく先生に叱られていた。泣いているY君を慰めるのが私の役目だった。僕だって友達と帰りたい、休みの日に友達と遊びたい。そう言っていたY君の願いが叶ったんだと思った。
それなのに、Y君は私を忘れていた!「誰?」と冷ややかな反応。Y君にとっては激動の日々だったんだから仕方ないよね。それにしても「大人は知ったかぶりするから」とまで言われ凍りついた。4年生になったY君はすっかり背も伸び、ドッジボールも上手くなっていた。それならそれでいいけれど。
チョコビのおかげ
児童クラブでは、朝と昼食後にDVD鑑賞をする時間がある。ディズニーの映画やアニメを子供たちに観せて、職員は見守りながら玩具の消毒をするのだ。自分が気に入らないものだと姿勢が崩れたり文句を言ったりするY君も、クレヨンしんちゃんは楽しんで観ていた。それで思い出した!私とY君しか知らないことを。
「この辺でチョコビが売っとるのは庁舎前のローソンだけやって、Y君教えてくれたよなぁ」...その時、「あ!」というY君の心の声が聞こえた。なんでもない会話が意味を持つことってあるんだね。チョコビのおかげで冷たい氷の壁は一瞬で溶けていった。
昔とったきつね
お盆が開けると教室が一変した。市内のコロナ感染者数が爆発的に増えたため、自主的に休む子が増えたのだ。少ない日は11人しかいなかった。Y君にも会えなくなり、とても静かになった。
子供たちといっぱい遊んだ今年の夏がもうすぐ終わる。ちびまる子ちゃんのことわざかるたを読んだ女の子は誰だっけ?
「そなえあればうれしいな」「むかしとったきつねが」と間違えているとも気付かず、大声で読んで笑わせてくれたあの子とももう会えていない。来年のことはわからないけれど、今度こそマスクなしの子供たちの笑顔が見たい。
甲子園が終わって夏も終わりだな〜と思うこの季節は、いつも切ない気持ちになる。
魚
写真の中で笑うあなた
悲しくても笑うあなた
あなたの心の中で泳いでる私
あなたの気持ちの
入口なのか 出口なのか
何も知らない
ひらひらと ゆらゆらと
西陽を浴びながら
ようこそ、あんずのくにへ